インボイス制度が始まって以来、経費精算システムの選び方が変わりました。従来は「申請が楽かどうか」「会計ソフトと繋がるか」が主な選定軸でしたが、今は適格請求書(インボイス)の登録番号を確認できるか、不備があれば自動で弾けるかが必須要件になっています。
この記事では、2026年6月時点の公式料金をもとに主要4サービスのインボイス対応状況と料金を整理し、会社規模別に「どれを選ぶか」を判断できるようにまとめました。
インボイス制度と経費精算の関係を整理する
2023年10月から始まった**適格請求書等保存方式(インボイス制度)**により、仕入税額控除を受けるには「適格請求書発行事業者の登録番号」が記載された請求書・領収書を保存しなければなりません。
経費精算の現場への影響は2点です。
① 領収書・請求書に登録番号があるか確認が必要になった 従業員が立替払いした際の領収書に、インボイス要件(登録番号・税率・税額の記載)が揃っているかを確認しないと、仕入税額控除が認められない可能性があります。
② 電子帳簿保存法との組み合わせで書類管理が複雑になった 電子取引で受け取った請求書はそのまま電子保存が義務。スキャナ保存する場合も一定の要件があります。2点の法律を同時に満たす必要があり、対応していないシステムでは手作業チェックが残ります。
料金比較表(2026年6月時点)
| 楽楽精算 | マネーフォワード クラウド経費 | ジョブカン経費精算 | freee会計 | |
|---|---|---|---|---|
| 初期費用 | 100,000円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 月額費用 | 30,000円〜 | 2,480円〜(年払い・50名以下) | 400円/ユーザー | 8,980円〜 |
| 最低利用料金 | 30,000円/月 | 2,480円/月 | 5,000円/月 | 8,980円/月 |
| 無料トライアル | なし(資料請求) | 1ヶ月 | 30日間 | あり |
| インボイス登録番号確認 | あり | あり | あり | あり |
| JIIMA認証(電子取引) | あり | あり | あり | あり |
| JIIMA認証(スキャナ保存) | あり | あり | - | - |
| 会計ソフト連携 | 幅広く対応 | API/CSV連携 | 自動仕訳対応 | freee会計一体型 |
| AI-OCR(領収書読取) | オプション | 自動取込あり | オプション+100円/人 | 自動読取あり |
| 補助金対応 | デジタル化・AI導入補助金インボイス枠対象 | - | - | - |
| 向いている規模 | 50名〜中堅 | 10〜300名 | 10〜500名 | スモール〜中小 |
※価格はすべて税抜表記。最新情報は必ず各社公式サイトでご確認ください。
各サービスの特徴と向いている会社
楽楽精算
楽楽精算は、**国内導入数No.1(2026年3月末時点でグループ108,000社以上)**を誇る中堅〜大企業向けの経費精算システムです。
インボイス制度への対応は手厚く、**「デジタル化・AI導入補助金2026」のインボイス枠(インボイス対応類型)**の対象ツールとして認定されています。補助金を使った導入を検討している会社は選択肢として外せません。
費用面では初期費用100,000円・月額30,000円〜と、他のSaaSと比べると高額です。ただし専任担当者によるWEB会議・電話・メールのフルサポートが初期から付くため、初めてシステム導入する経理部門でも安心して立ち上げられます。JIIMA認証(スキャナ保存・電子取引の両方)を取得しており、電帳法対応も万全です。
楽楽精算が向いている会社:
- 従業員50名以上の中堅〜大企業
- 初期導入サポートを重視する
- 補助金申請を活用したい
- 複数の会計ソフトと連携している
マネーフォワード クラウド経費
マネーフォワード クラウド経費は、50名以下の企業に特化した低価格プランを持ちながら、JIIMA認証(スキャナ保存・電子取引)を取得していることが強みです。
年払いで月2,480円〜という価格帯は、中小・スタートアップが経費精算を電子化するコストとしてもっとも現実的な水準です。OCR機能が標準搭載されており、スマホで撮影した領収書を自動でデータ化。インボイスの登録番号チェックも自動化されているため、担当者の確認工数を大幅に削減できます。
51名以上の企業は別途見積もりになりますが、三菱UFJ銀行・三井住友銀行などとのAPI連携によるワンクリック振込は中規模以上の企業でも導入効果が高い機能です。
1ヶ月の無料トライアルがあり、クレジットカード登録不要で始められます。
マネーフォワード クラウド経費が向いている会社:
- 従業員10〜50名のスタートアップ・中小企業
- コストを抑えながら電帳法・インボイス対応を一気に済ませたい
- マネーフォワード クラウド会計・給与と連携したい
ジョブカン経費精算
ジョブカン経費精算は、ユーザー数×400円という従量課金モデルを採用しています。少人数から使い始めて社員数に合わせてコストを調整しやすいのが特徴です。
AI-OCRはオプション(+100円/ユーザー)、タイムスタンプもオプション(+100円/ユーザー)と、必要な機能だけ追加できる構造です。インボイス対応の確認機能と自動仕訳・会計ソフト連携を標準装備しており、ICカード(交通系IC)で交通費を自動読み取りできる点は出張が多い会社で喜ばれます。
ジョブカン勤怠管理・給与計算とシリーズで揃えると、各担当者が1つのIDで複数サービスにアクセスできる「ジョブカンシリーズ」の管理統一メリットがあります。
ジョブカン経費精算が向いている会社:
- 従業員数の増減が多く従量課金のほうがコントロールしやすい
- ジョブカン勤怠管理・給与計算も導入済み(または検討中)
- ICカード・交通費精算の自動化を優先したい
freee会計(経費精算機能含む)
freee会計は、会計・確定申告・経費精算を1つのプラットフォームで管理したい会社に向いています。経費精算は単独サービスではなくfreee会計に統合されており、インボイスの登録番号照合・電子帳簿保存法対応も含まれます。
中小企業向けプランは月額8,980円〜で、経費精算・帳簿作成・確定申告・レポートをまとめて使えることを考えると、経費精算専用ツールと会計ソフトを別々に契約するより総コストが下がるケースがあります。
freee会計(経費精算機能)が向いている会社:
- freeeで会計・確定申告をすでに行っている
- ツール数を絞り込んで管理コストを下げたい
- スモールビジネス〜20名以下の少人数チーム
インボイス対応で「特に確認すべき3つの機能」
システムが「インボイス対応」を謳っていても、実際の機能レベルには差があります。導入前に以下の3点を確認してください。
① 適格請求書の登録番号の自動検証
申請された領収書・請求書に記載されているTから始まる13桁の登録番号が、国税庁の登録番号データベースと一致するかをシステム側で自動照合するかどうかを確認します。手動確認のままだと、担当者の見落としリスクが残ります。
② 不備のある書類の自動差し戻し
税率・税額の記載漏れや、登録番号がないインボイス非対応の領収書を申請された場合に、承認前に自動で差し戻すルール設定ができるかを確認します。手動チェックのみでは業務量が増えるだけです。
③ 電子取引データの適切な保存
メール添付やPDFで受け取った請求書を、電子帳簿保存法の要件(真実性・可視性)を満たす形式で保存できるかを確認します。単にファイルを保存するだけでは法的要件を満たしていない場合があります。
会社規模別おすすめ
10〜30名のスタートアップ・中小 → まずはマネーフォワード クラウド経費の1ヶ月無料トライアルかジョブカン経費精算の30日間試用で操作感を確認する。コストは月5,000〜10,000円前後で抑えられる。
30〜100名の成長期の会社 → 経費精算ツール単体を拡張するか、freee会計でまとめるかを選択。マネーフォワード クラウド経費は51名以上になると見積もりが必要で費用感が変わる。ジョブカン経費精算はユーザー数が増えても従量計算なので予測しやすい。
100名以上の中堅企業 → 楽楽精算の月額30,000円〜という固定費型のほうが、ユーザー単価より安くなるケースが出てくる。専任サポートによる導入支援と、補助金申請のサポートを合わせて検討する価値がある。
よくある質問
Q. インボイス制度に対応していない領収書の経費は全額認められないのですか? 認められない場合があります。ただし経過措置として、2026年9月30日までは仕入税額の80%、2029年9月30日までは50%の控除が認められています。2029年10月以降は原則として適格請求書のない領収書では控除が受けられなくなるため、今のうちにシステム整備を進めておくことが重要です。
Q. 電子帳簿保存法とインボイス制度は別のことですか? 別の法律です。インボイス制度は消費税法に基づく書類の記載要件・保存要件で、電子帳簿保存法はデジタルデータで受け取った書類の保存ルールです。ただし「メールで受け取ったインボイス(PDF請求書)」は両方の要件を同時に満たす必要があるため、現場では一緒に対応が求められます。
Q. 補助金は使えますか? 楽楽精算はデジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠対象ツールとして認定されています。補助金を受けるには導入契約前に申請が必要です。他のサービスについても補助金の対象ツール認定状況が変わることがあるため、最新情報を各社公式サイトで確認してください。
Q. すでに会計ソフトを使っているのですが、乗り換えは必要ですか? 経費精算ツールは、多くの場合、既存の会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワードなど)と連携する形で導入できます。会計ソフトを替えずに経費精算だけ電子化するケースが大半です。連携先として自社の会計ソフトが含まれているかを導入前に確認してください。